「遺言書を書いてみませんか?」
仕事柄、取引先の社長や資産家の方に、そんな話をする機会があります。
でも、ふと振り返ると、肝心の自分は一度も書いたことがありませんでした。
人に必要性をお伝えする立場なのに、自分自身は書いたことがない。
「それなら、一度自分でも書いてみよう。」
そんな思いつきから、今回初めて遺言書を作成してみました。
遺言書は、お金持ちだけのものだと思っていた
正直に言えば、遺言書というのは資産家や経営者が作るものだと思っていました。
でも仕事を通じて知ったのは、相続でもめるのは、必ずしも大きな資産を持つ家庭だけではないということです。
むしろ、相続財産がそれほど多くなくても、家族だからこそ感情が絡み、争いに発展してしまうケースは少なくありません。
財産の大小ではなく、「誰に何を残したいか」を本人がきちんと伝えているかどうか。
そこが大切なのだと感じるようになりました。
「死」が少しずつ身近になってきた40代
人生100年時代と言われます。
それでも40代になってから、「死」というものを以前より現実的に考えるようになりました。
会社の先輩の死。
親族やご近所さんとの別れ。
取引先の経営者の訃報。
そして毎年のように起こる自然災害。
もちろん、死は怖いものです。
考えたくない気持ちもあります。
でも、その一方で、命に限りがあるからこそ、今日という一日が少しだけ大切に思えるようにもなりました。
「明日も当たり前に来る」とは限らない。
そう思うようになったことが、今回遺言書を書こうと思った一番の理由だった気がします。
私が選んだのは「自筆証書遺言」
遺言書にはいくつか種類がありますが、私が選んだのは「自筆証書遺言」です。
公正証書遺言という選択肢もあるのは知っていました。
でも、いきなり公証役場に行って正式な手続きを、というのは、なんとなく気が重かった。
今回はあくまで「一度自分でも書いてみる」という、お試しに近い感覚だったので、まずは費用もほとんどかからず、自分ひとりで始められる自筆証書遺言を選びました。
その一方で、紛失や改ざん、方式の不備といった課題もあります。
そこで今回は、法務局が遺言書を保管してくれる「自筆証書遺言書保管制度」も合わせて利用しました。
費用は3,900円。書き方や必要書類は法務局のサイトに詳しく載っていて、思っていたよりずっと手続きは簡素でした。
財産目録の部分はAIにも手伝ってもらいながら作成しました。こういう場面でも、AIのありがたさを感じます。
制度の詳しい中身よりも、「思っていたより気軽に始められた」という感覚だけ、ここでは残しておきます。気になる方は、お近くの法務局で聞いてみてください。
遺言書を書いて、一番良かったこと
実際に書いてみて、一番良かったのは、自分の資産を改めて整理できたことです。
銀行口座。
証券口座。
保険。
現金。
「自分は今、何を持っているのか。」
普段は把握しているつもりでも、改めて一覧にしてみると、新たな気づきがありました。
そしてもう一つ。
もし明日、自分に何かあったとしても、お金のことで家族が困る可能性を少し減らせた。
そう思えたことで、不思議と心が少し軽くなりました。
もちろん、「これでいつ死んでも後悔はない」とまでは言えません。
でも、金銭面で残る後悔は、少し減った気がしています。
想いは、書いてみないと形にならない
今回書いてみて、あらためて思ったことがあります。
誰に。
どんな想いで。
何を託したいのか。
そういうことは、頭の中では分かっているつもりでも、実際に書いてみるまでは、ちゃんと自分の中で形になっていなかった。
書くという作業を通して、初めて自分の考えがはっきりしてくる。そんな感覚がありました。
おわりに
まだ40代で遺言書を書く人は、それほど多くないかもしれません。
どこか「縁起でもない」と感じる空気も、日本にはまだ残っている気がします。
でも、新NISAが広まり、AIも身近になり、お金について学ぶ人が増えている今だからこそ、「人生の終わり」について考えることも、少しずつ自然になっていくのかもしれません。
遺言書を書いたからといって、死を意識して暗くなるわけではありませんでした。
むしろ、今をどう生きるかを考える時間になりました。
遺言書を書いた日、不思議と「死」のことより、「今をどう生きたいか」を考えている自分がいました。
人生の終わりのために書いたはずの一枚が、今の自分を見つめ直すきっかけになった。
そんな経験は、40代の今だからこそ得られた、小さくて大切な財産だったように思います。
